水道工事の第一工程として行われるのが「試掘」と「配管経路の調査」です。これは、前面道路下に埋設された本管や既存配管の正確な位置や深さ、接続の可否を事前に把握するための重要な作業です。試掘が不十分なまま工事に着手してしまうと、他の埋設物との接触や破損、誤接続といった重大なトラブルが発生しかねません。
試掘とは、工事の本掘削に先立って、小規模な範囲を慎重に掘り進めて地下の状態を目視確認するプロセスを指します。これにより以下のような情報を得ることができます。
試掘で確認する主な内容
1 地中埋設物の有無(ガス管、通信ケーブルなど)
2 配水管や本管の位置・口径・材質
3 既設の給水管・排水管の状態(腐食・破損の有無)
4 路面からの深さ(施工可能な掘削深さの判断)
5 前面道路の舗装状況と復旧条件
この工程は、掘削と仮設足場の設置を含めると半日から1日程度かかる場合もあります。特に都市部や集合住宅の敷地などでは埋設物が密集していることも多く、図面と実際の状況が異なるケースが少なくありません。
試掘結果を基に、水道局への申請内容や施工計画の見直しが行われることもあります。現場で本管の口径が想定と異なれば、給水量不足や水圧の不安定さにつながりかねません。また、試掘と同時に現況写真を撮影し、工事前後の記録として残しておくこともあります。
この段階の徹底した調査が、のちの断水トラブルや施工ミスの予防につながり、施工全体の効率を高める要となります。
仮設配管の設置と給水切替のステップ(住民対応と仮設水道の注意点)
既存の水道配管を撤去して新しく布設する際には、断水による影響を抑えるために仮設配管の設置が重要です。特に集合住宅や商業施設では、工事中も安定した給水を確保するため、仮設給水設備を併設することで住民や利用者の不便を最小限に抑えることが求められます。
仮設配管とは、一時的に本設の給水ルートを代替する簡易な配管です。施工の流れとしては、まず現地調査と仮設ルートの設計を行い、ポリエチレン管など柔軟性のある資材を使用して敷設します。その後、通水テストを実施し、既設管からの切替を行い、工事完了後に再び本設に接続し、仮設配管を撤去します。
仮設配管において注意すべき点は多く、冬季の凍結防止、接続部の漏水対策、衛生面への配慮、住民への丁寧な説明、資材の管理などが挙げられます。特に自治体や管理組合との事前協議を行わずに進めると、規制違反やトラブルを引き起こす可能性があるため、仮設配管の仕様や設置場所についても厳格な基準を確認する必要があります。
老朽配管の撤去から新設管の布設まで(布設替工事の手順とリスク回避策)
老朽化した水道管は、漏水や赤水、水圧の低下など深刻な問題を引き起こすため、早めの布設替工事が重要です。特に都市部では地下に多数の埋設物があり、狭い道路での作業となるため、事前調査と高い施工技術が求められます。
布設替工事は、既存配管の撤去から新しい管の布設、接続、水圧確認、舗装復旧まで段階的に進行します。掘削時に他の埋設物に誤って接触するリスクや、勾配調整の必要性が発生する場合があり、図面との不一致を防ぐためにも、事前の試掘や慎重な掘削が不可欠です。
使用する配管材は現場条件に応じて選定され、ポリエチレン管や鋳鉄管の他、耐食性を重視した特殊材が用いられることもあります。切替時には仮設と本設を迅速に移行し、数時間以内で通水と水圧調整が完了する体制が理想です。
最後に、施工直後には全線の仮通水試験とバルブの動作確認を行い、不具合があれば即座に対処できるよう備えることが、工事成功の鍵となります。
通水試験・水圧検査・舗装復旧までの施工完了のための確認工程
布設工事が完了しても、水道工事はすぐに終了するわけではありません。通水試験や水圧検査、そして舗装復旧といった重要な確認工程が残されており、これらは水道インフラの安全性と信頼性を保証するうえで不可欠なプロセスです。
通水試験では、新たに敷設した配管に実際に水を流し、末端までの流量や水の色、濁り、水圧、接続部の漏水、バルブや逆流防止装置の作動状況を確認します。水圧の適正値はおおよそ0.3〜0.5MPaで、高すぎても低すぎても問題が発生する可能性があるため、丁寧な圧力調整と検査が重要です。
その後の舗装復旧工程では、仮設状態だった掘削部分の地面を元の状態に戻します。締固めによる沈下防止や、舗装面の高さと勾配調整、仮設備の撤去、工事前後の記録写真の撮影と報告などが行われます。施工完了後には、水道局や自治体に書類を提出し、検査に合格して初めて正式な完了となります。
最終工程は工事全体の信頼性を左右するため、細部にまで注意を払い、確実に仕上げることが求められます。