電気屋が水道工事をするにはどんな資格が必要か
電気屋が水道工事を行うには、単なる経験や知識だけでは不十分です。法律で定められた「給水装置工事主任技術者」などの資格を有していなければ、たとえ軽微な工事であっても正規に請け負うことはできません。これは各自治体が指定する「指定給水装置工事事業者」に登録されている必要があるためであり、資格を保有していなければ原則的に工事自体が違法となる可能性があるのです。
このほか、水道工事を行ううえで代表的な資格を表にまとめました。
| 資格名称 |
管轄 |
必要な工事内容 |
試験実施時期 |
| 給水装置工事主任技術者 |
厚生労働省・各自治体 |
給水装置の設置、修繕、交換 |
年1回(通常10月) |
| 排水設備工事責任技術者 |
地方自治体・下水道管理者 |
排水管の設置、排水枡の接続など |
年1回(自治体ごと) |
| 第二種電気工事士 |
経済産業省 |
電気を通す工事(照明、配線等) |
年2回 |
水道工事を電気屋に依頼しようと考えている方は、まずその業者が上記の資格を保有しており、かつ自治体の指定業者として登録されているかを確認することが安心の第一歩です。実際には「家電修理」や「洗濯機設置」などで水道周りの接続作業を行う場合もありますが、正式な施工となると資格の有無が判断基準となります。
近年では「家電なんでも修理」をうたう業者が増加しており、電気と水道の両方に対応しているように見えることもありますが、上記資格が無い業者による施工は水漏れや破損といったリスクを伴うため、注意が必要です。
電気工事士と水道工事業者の法的な違いとは
電気工事と水道工事は、見た目には似たような配線・配管作業が多く存在しますが、法的には明確に区別されています。電気工事は「電気工事士法」に基づき、経済産業省の所管で実施されるものであり、一方の水道工事は「水道法」や「下水道法」などに基づき、厚生労働省や各自治体の所管です。
例えば、電気屋が行うことのできる業務には以下のような内容が含まれます。
- コンセント・照明の増設や移設
- ブレーカー・分電盤の交換
- 太陽光パネルやエコキュートなどの設備設置に伴う配線工事
- 家電製品の修理、設置(洗濯機・冷蔵庫など)
これに対して、水道工事業者が扱う作業は以下のようなものです。
- 給水管・排水管の引き込み
- キッチン水栓・混合水栓の交換
- トイレ・洗面化粧台の水まわり工事
- 浴室の水漏れ修理、配管補修
電気工事士の資格を有する業者が、これらの水道作業を無資格で実施することは法令違反となります。特に給水設備は水質や衛生管理に直結するため、施工にあたっては「指定給水装置工事事業者」であることが求められます。これは厚生労働省が公表する「水道法第16条の2」においても明確に記載されています。
以下に、両者の業務範囲の違いをまとめた比較表を示します。
| 比較項目 |
電気工事士 |
水道工事業者 |
| 所管 |
経済産業省 |
厚生労働省・地方自治体 |
| 主な業務範囲 |
配線、照明、コンセント設置など |
水道管設置、蛇口・水栓の修理・交換 |
| 必要な資格 |
第二種電気工事士、第一種電気工事士 |
給水装置工事主任技術者、排水設備技術者など |
| 資格取得方法 |
筆記試験+技能試験 |
筆記試験(技能は登録事業者にて確認) |
| 法律上の制限 |
無資格施工は禁止 |
指定事業者以外の施工は禁止 |
このように、施工内容が類似しているように見えても、法律的にはまったく別の業務区分であり、業者がそれぞれのライセンスを有していない限り、跨いだ業務を行うことはできません。
特に近年は、リフォーム需要の増加が求められる風潮のなかで、両方に対応できる業者のニーズが高まっています。そのため、電気屋に依頼する際も、水道分野において「正式な資格と登録を有しているか」を必ず確認することが、安心につながります。
軽微な水道修理は電気屋で対応可能?
結論から申し上げますと、電気屋が軽微な水道修理に対応することは可能ですが、その範囲には法的な制限があります。たとえば、洗濯機の設置時にホースの取り付けを行う、緩んだ蛇口を締め直すといったレベルであれば、電気屋でも対応可能な範疇に入るとされています。
ただし、配管の一部を切断・接続する、あるいは水栓金具自体を交換するといった作業には、「給水装置工事主任技術者」の資格が必要となり、資格がないまま作業を行った場合は、施工内容によっては罰則の対象となる恐れがあります。
軽微な作業とされる代表的な例は以下の通りです。
- 洗濯機の給水ホースの接続
- 緩んだ水道蛇口の締め直し
- 簡単なパッキンの交換
- 水漏れ確認のための点検や仮止め対応
これらの作業であれば、資格がなくても法律違反には該当しないとされるケースが多いものの、それでも「工事」と呼べるレベルに達した瞬間に、建設業法や水道法が関与してきます。
また、ホームセンターやインターネットなどで購入した蛇口や混合水栓を取り付ける場合、部品の構造や水圧に対応する知識が求められるため、専門知識がないまま行うことはリスクが伴います。水道蛇口交換のやり方に関する情報は多くありますが、「自分でできる」と判断する前に、施工範囲と法律の線引きを理解することが重要です。